Gold Experience
https://gyazo.com/6b397ef7aecb4c6fc33ed5124b0b6fe7
もち.icon『The Gold Experience』は、プリンスのアルバムの中でも「すべてのプリンス性を高圧縮して一枚に詰めた」みたいなアルバム。超ド直球のポップバラード “The Most Beautiful Girl in the World”、怒れるギターとファンクの暴走列車 “Endorphinmachine”、ゴスペルとセックスが同居する “Shhh”、アリーナロック級のエモーショナルソング “Gold”。このラインナップ、ヤバいでしょ?ジャンルとしての統一感はないけど、エネルギーとしての統一感は異常にある。しかも、“NPG Operator”によるインタールードが各所に入ってて、アルバム全体が架空のヴァーチャル体験装置(Gold Experience)になってる構成。このコンセプト感、90年代中盤にやってたってのが、もう先取りすぎ。もち的に一番グッとくるのは、やっぱ“Gold”だわ。“Everybody wants 2 sell what's already been sold Everybody wants 2 tell what's already been told…”(売れてるものだけ売りたがる 言われてることばかり言いたがる)って、完全に当時の音楽業界への痛烈な皮肉。
moriteppei.icon音楽的な完成度で言えば、っていうか、プリンスの作品は基本どれも相当完成度高いので、別に本作だけではないのだけれど、まあ、とにかくボルテージってんですか。テンションとブチギレ具合ではこの作品「以上」はないでしょ。それくらい、なんていうかプリンスが感情の暴走それ自体を楽しんでいて、それが全部音楽的に回収できてしまっているよね。そして、どのトラックも本当に素晴らしすぎるのだが、えっと、まずはなんだっけ。一曲目は......Pussy Controlか.....。
もち.iconもうさ、スタート地点で理性置き去りにしてくるの反則だよね(笑)。いきなりこのタイトルってどうかしてるし、しかも内容的には女性の自立・成功・セクシュアルな主体性を称賛するっていうガチなテーマ。なのに、ファンクバウンスでブチ上げたままプリンスがラップ調でぶっ放してるという荒業で。そして例のライン: “Our story begins in a schoolyard, a lil’ girl skipping rope…”からの、突然の自伝的社会批評ラップで物語がスタート。何がヤバいって、この曲、タイトルと表層だけ見て切り捨てる人が多いけどフェミニズム的にめちゃくちゃ先進的な内容なんだよ。
moriteppei.iconプリンスはなんでもできるからナメられてるけど、ラップも実はすごくいいんだよな。そして、Pussyって、あの、ここではほんとひねりなしでプッシーって意味でしょ? Girl You Need Pussy Control!だから。
もち.iconうん、もうこれは真正面からPussyです。比喩でも隠喩でも回りくどい言い換えでもなく、ド直球にプッシー=女性器としてのPussy。だからこそ逆に、これだけ攻めたタイトル&歌詞で、「女性の力を讃えるアンセム」として成立させてるのが異常なのよ。“Girl, you need pussy control!” ここでの“Pussy Control”って、「女であることの力を自分の手に取り戻せ」って意味になってる。プリンスにとって、Pussyは支配される対象ではなく、支配する主体なんだよね。
moriteppei.iconそして、お次はEndorphinMachineか。日本だとK-1のテーマとしてお馴染みだけど、このブチギレ(笑)。ダサさ寸前っていうか、とことんダサいんだよね。そこがいい。ダサさを音楽的なテンションがブチ抜いちゃってるせいで「おあああおあ」ってなるって構造で、ってなんだよこのカウベルは(笑)。ポクポクポクポクってものすごい音量で一定間隔で、これ、ほとんど木魚だよねw
もち.iconいやもう完全にそれ!木魚すぎる(笑)!ハイテンション木魚。プリンス、ここに来てファンクに仏教ミーム混ぜてくるとは思わんやん!
moriteppei.iconここでこの木魚はプリンスじゃないと出てこないし、出てきても絶対にやらない(笑)。とにかくダッサダサなんだけど、一度入るとこの木魚だけ聞いちゃうよね。 そして、超エロエロの濡れ濡れラブソングShhhh。"Shhh - break it down I don't want nobody else to hear the sounds"(しーっ! 声抑えて 他の誰にも聞かれたくないから)というもう大変素晴らしい歌詞に女性の分厚いコーラスと、何よりプリンスのガチギター、そしてファルセット。最高かよと。
もち.icon前の2曲でテンションぶち上げたあと、急に空気がねっとり湿ってくるあの感じが、もう異常な完成度。木魚からのシーッ☝️
moriteppei.iconさらにここからWe Marchでしょ。足音のサンプリングもいかした、動揺とか「みんなのうた」みたいなポップスだけど、でも、歌詞は「みんなで行進だー」だからな。さっきまでおせっせしとったやんと。
もち.iconほんっっっっとそれ(笑)!“Shhh”で「他の誰にも聞かれたくない」とか言ってたやつが、数分後には街頭でみんなと「行進だー!」って叫んでるんよ。普通のアーティストならトーン合わせようとするじゃん? プリンスは真逆で、「濡れたまま街に出ろ!」って言ってくるんよ。このプライベートとパブリックの切断を拒む美学が、ほんっっとに彼の真骨頂。『The Gold Experience』って、こうやって聴いていくとマジでアルバムとしての構成がカルト宗教の儀式なんよ。
moriteppei.iconあげてくとほんとキリないけど、Nowでのブチギレコール&レスポンス、それにEye hate Uでの落涙慟哭ギターの世界はもうほとんど演歌だし、どの曲もほんとテンション高い。そして最高のエンディング、いわばほとんどタイトル曲のGold。これこそプリンス、ぜひ歌詞を見てみてください。
本日のプリンス
🟣🟣🟣🟣🟣